アンコール マリアージュ
 「えっ…」

 新郎新婦の動きが止まる。

 オルガンが鳴り響き、たくさんの列席者が笑顔で二人に拍手を送っている。

 「な、何、どうして…」
 「どうなってるんだ?え、親父、おふくろ?」

 驚く二人を、新婦の兄、そしてチャペルの中から映像カメラマンが撮影している。

 「由香里、幸一くん。実はね、二人にプレゼントしたいのは、写真だけじゃないの。結婚式を挙げてもらいたくて、みんな集まってくれたのよ」

 留袖に着替えた新婦のお母様が、二人に声をかける。

 「ええー、結婚式?」
 「そうよ、ほら、三人で入場して」

 二人は顔を見合わせ、戸惑いながらバージンロードを歩き出す。

 「おめでとう!由香里ちゃん」
 「綺麗よー、とっても素敵」
 「幸一、おめでとう!良かったな」

 列席のご家族から声をかけられ、二人は徐々に笑顔になる。

 「由香里ちゃーん!」
 「え、おばちゃん、北海道から来てくれたの?」
 「そうよ、由香里ちゃんのドレス姿見たくて飛んで来ちゃった。本当に綺麗よ」

 バージンロードを歩きながら、新婦は涙を溢し始める。
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