アンコール マリアージュ
 「おはようございまーす」
 「おはよう、真菜。今日は挙式ないのに早いのね」
 「ちょっと打ち合わせが立て込んでるので、早めに準備したくて…」

 真菜が久保と話していると、オフィスの電話が鳴った。

 営業時間にはまだ早く、珍しいなと思いながら受話器を上げる。

 「お電話ありがとうございます。アニヴェルセル・エトワール、フェリシア 横浜の齊藤でございます」
 「えっ?!齊藤さんですか?」
 「は?はい。そうですが…」
 「あのあの、俺達、そちらで結婚式挙げたくて…。空いてる日、ありますか?」
 「はい?あの、このお電話で日取りを押さえられるのでしょうか?失礼ですが、こちらをご見学された事は?」
 「ないです。だめですか?」
 「いえ、大丈夫ですが。その、一度式場をご覧頂いて、説明させて頂いてからでは…」
 「もう、そこで挙げようって決めたんです、俺達。他の人に取られちゃう前に、急いで日程押さえようと思って」

 真菜は、戸惑いつつも分厚い予約ファイルを取り出した。

 「かしこまりました。それではご希望のお日にちはございますか?」
 「土日で、なるべく早くお願いします」
 「承知しました。それですと…」

 すると、また別の外線電話が入り、久保が応答する。

 「はい?挙式のご予約ですか?ご見学はされなくても大丈夫でしょうか?」

 ん?同じ様な内容?と、ファイルをめくりながら真菜が考えた時、またもや別の電話が鳴り始める。

 (ええ?!どういう事?なんでこんな、営業時間前に電話が次々かかってくるの?)

 電話に応対しながら、久保と視線を合わせて無言のやり取りをする。

 (なんで?何事?)

 対応し切れず鳴り響いていた電話が留守番電話になり、相手が諦めて電話を切ったと思ったそばから、また次々と鳴り始める。

 (ヒーッ!一体なぜー?)
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