アンコール マリアージュ
引き受けてはくれないだろうか?!
 テレビ放送から半月が経った頃、真菜は本社を訪れていた。

 久保から、齊藤専務が話があるから、本社に来て欲しいそうよ、と言われたのだ。

 真は役員車を手配してくれ、真菜は優雅に横浜から本社まで、ゆったりとくつろいでやって来た。

 1階の受け付けで声をかけ、案内されたソファで待っていると、やがて真がやって来た。

 「お待たせ。悪いな、呼び出したりして」
 「いいえ。こちらこそ、車を手配して下さって、ありがとうございました」

 二人で肩を並べて歩き出す。

 何だか久しぶりで照れくさくなり、真菜はうつむき加減ではにかんだ。

 「テレビの反響、どうだった?」
 「それはもう!凄かったです。店長、バタンキューでしたよ」
 「ははっ、そうだろうな。予約数が一気に増えたもんな。真菜は?知り合いから何か言われたか?」

 真菜は、少し苦笑いを浮かべる。

 「はい…。色んな人から連絡が来ました。もう、笑われるやら、からかわれるやら。テレビに映る事はOKしましたけど、あんなふうに名前まで出るとは思ってなくて…。しかも、結構何度も映ってて。みんな、私の顔が変形していくって、大笑いしてました」

 真も、あはは!と笑い出す。

 「確かに。映る度にどんどん目が腫れていってたもんな。スマホも認証してくれないくらいに」
 「あー。そうでしたね」

 真菜も、ははっと乾いた声で笑う。

 そして、ふと、隣の真の顔を見上げた。

 「ん?どうした」
 「いえ。何だか不思議な感じがして。真さん、いつもここで働いてらっしゃるんですね」
 「ああ。1人寂しく部屋にこもってな」
 「そうなんですか?うちの賑やかさを分けてあげたいですよ。もう、毎日ワチャワチャです」
 「確かに。あそこの雰囲気はいいな。真菜も、楽しそうに仕事してるし」

 そう言って微笑みかけてくる真に、真菜はどぎまぎしてうつむいた。
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