アンコール マリアージュ
 やがて運ばれてくる料理に、真菜は、へーと1つ1つじっくり見ながら感心する。

 メニューを説明するスタッフの言葉を真似て、ポワソン、ヴィアンド…とぶつぶつ繰り返しては頷いた。

 「骨付き鶏もも肉のソテー ディアボロ風ソースでございます」

 お辞儀をしスタッフが退出すると、真菜はじーっと料理に見入る。

 「出た!これが真さん御用達の、チキンソテーのなんちゃらかんちゃらね!」
 「何だそれは?別に俺の御用達ではない。それに真菜の唐揚げの方がうまいしな」
 「まっさかー!んー、美味しい!これ、もの凄く美味しいですよ。どうやって作るのかな、このソース」

 終始美味しい料理に感激し、最後のデザートを味わう。

 「はー、平日の昼間からこんな贅沢なランチを頂けるなんて。なんだかすみません。本当は真さんと社長が会食されるはずだったのに」
 「気にする事はない。それにこれは社長命令だからな。それより真菜、雑誌の取材、どうしてもだめか?あの雑誌は真菜もいつも読んでいるだろう?」
 「はい。だからこそ、あのページに自分が載るのはちょっと考えられないです。私、いつも参考にさせてもらって、皆さんすごいなーって感心しながら読んでいたので。あの職業紹介のコーナーを読んで、この仕事に憧れるって読者もいるかもしれないし。そう思うと、私なんてそんな…」
 「なぜそんなに卑下する?お前は優秀なプランナーだと思うが?」
 「いえ、本当に私なんて…」
 「俺は今まで、色々なスタッフを見てきた。だが、お前ほど熱心で、お客様に誠意を尽くすプランナーは見た事がない。これは俺の本心だ」

 真剣な表情でじっと真に見つめられ、真菜は飲んでいたティーカップを置いて話し始めた。
< 151 / 234 >

この作品をシェア

pagetop