アンコール マリアージュ
 「ん?何を書いてるんだ?」

 こちらに歩いて来た真は、真菜がメモ帳に何やら書き込んでいる手元を覗き込もうとする。

 「だーめ!秘密です」

 慌てて真菜はメモ帳を閉じる。

 ふーん?と真は不服そうだ。

 「それより真さん、見て!キッチンカーがある。何か食べません?」
 「お、いいな!」

 二人で何台か並んだキッチンカーを見比べる。

 「真菜はどれがいい?」
 「んー、あれかな?ロコモコ丼!」
 「ああ、ハワイの」

 真はキッチンカーに近付くと、ロコモコ丼を2つ買った。

 「はい、これ真菜の」
 「ありがとうございます。あ、お金…」
 「いいって、そんなの」

 財布を取り出そうとすると、真が止める。

 「だめですよ。だって今はまだ私達、付き合う前の設定なんですよ?」
 「それにしてもだ。これから告白しようと思ってるんだろ?そんな相手に財布出させてどうする」
 「だけど女の子としては、彼氏でもないのに、奢ってもらうなんてって思う訳ですよ」
 「ふーん。そんなもんか?」
 「そうです。だから…あ!そうだ」

 そう言うと真菜はタタッと芝生の方へ走り出し、自動販売機でコーヒーを2本買って戻って来た。

 「はい!こっちは真さんの分」
 「ありがとう。じゃあ遠慮なく」

 二人は微笑み合うと、木陰の芝生に座って食べ始めた。
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