アンコール マリアージュ
 「エリア統括マネージャーと一緒にいたって事は、本部の方でしょうか?」

 真菜が聞くと、希は頷く。

 「そうだと思う。でも今まで見たことない顔だから、どこか違うエリアにいたマネージャーかもね。ほら、来月、人事異動あるし」
 「なるほど。じゃあうちのエリアのマネージャーが、あの人になるかもしれないって事ですか?それで下見に来られたとか」
 「分からないけどね。正式な発表もまだだから、聞いても答えてくれないだろうし」

 うーん…と真菜は考え込む。

 (また顔を合わせる事になるのかな…。なんだか気が重いな。あの人、どことなく近寄り難い雰囲気だったし。でもエリア統括マネージャーなら、普段は本社にいるし、そんなしょっちゅうここには来ないか)

 そうこうしているうちに、希が真菜の髪型を編み込みで整えてくれ、二人はオフィスに戻った。

 だが、あの男性とエリア統括マネージャーの姿はすでになかった。

 (結局名前も分からず仕舞いか…)

 今日のブライダルフェアは、15組中10組のご成約を頂くという好成績。
 久保はもう喜びに浮かれっぱなしで、マネージャーの事は話題にもならなかった。

 (とにかく、フェアが大成功だったのは本当に良かったなあ。はあ、疲れた。明日は挙式もあるし、早くお風呂に入って寝よう…)

 真菜は、ノロノロとベッドから降りた。
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