アンコール マリアージュ
 ランドマークタワーに昇って景色を眺めたり、ブラブラとショッピングモールを覗いてから、すぐ隣の横浜美術館に入る。

 「あ!モネ展やってる!私、好きなんです、クロード・モネ。『睡蓮』ももちろんだけど、『日傘をさす女』もなんか好きで」
 「ああ。モネはいいよな。オランジュリー美術館にも、いつか行くといい」
 「そっか!真さん、パリにいたんですものね。私もいつかオランジュリー美術館で、『睡蓮』を専用展示室で見てみたいなー」

 美術館のカフェでお茶を飲み、外に出ると、辺りはすっかり夕暮れの空気に変わっていた。

 「で?お次はどちらに参りましょうか?彼女さん」

 おどけて真が聞いてくる。

 「うーん、そうですね。夜景の綺麗なレストランに行きたいんですけど…。でもそこでは何も起こらないので、適当にファミレスでもいいです」
 「そんな事言って…ディナーのあとはプロポーズするんだろう?プロポーズの前にファミレスってのもな。まあ、ここは彼氏に任せなさい」

 そう言うと真は、ホテルの高層階のレストランに入る。

 「ちょ、ちょっと、大丈夫ですか?こんな高級なお店…」
 「そりゃお前、今夜はプロポーズしようって男なら、張り切ってこういう所に連れて来るだろうよ?そんなリアルな体験をするのが今日の目的じゃないのか?」
 「そ、それは、まあ」
 「よし。じゃあ、もう俺は彼氏だから、ここは俺がご馳走するからな。あ、ワインも飲むぞ。プロポーズ前の景気付けにな」

 そう言って、真は次々と料理やお酒をオーダーする。

 窓際の席からは外の景色が良く見え、赤く染まった夕焼け空が、やがてキラキラと星が瞬く夜空へと変わっていった。
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