アンコール マリアージュ
 食事を終え、真菜は真に、ご馳走様でしたと頭を下げる。

 「いえいえ。喜んで頂けましたか?」
 「それはもう。お腹一杯!」

 心地良い夜風を受けながら、二人は輝く街を歩いて行く。

 「えーっと、真菜さん。僕はプロポーズを控えて緊張してきたのですが。一体どこへ連れて行かれるのでしょうか?」

 真が、本気なのかおどけているのか、良く分からない口調で聞いてくる。

 「んーと、この辺りだと思うんだけどなー」

 メモ帳を見ながら、真菜が辺りを見渡す。

 「あった!万国橋!」

 真菜がタタッと小走りになり、真は眉間にシワを寄せる。

 「え、ここ?こんなただの道路沿い?」

 そう言って真菜に近付く。

 「見て!真さん」

 やがて隣に並んだ真は、真菜の指差す方を見て息を呑んだ。

 「凄いっ…」

 みなとみらいの煌めく夜景が、パノラマの様に広がっている。

 「綺麗ねえ。ほら、水面に建物がキラキラ映ってるでしょ?『逆さみなとみらい』って呼ばれてるんだって」
 「本当だ。綺麗だな」

 しばらく二人で眺めたあと、真菜が再びメモ帳に目を落とす。

 「なんかね、ランドマークタワーからクイーンズスクエア、観覧車、海沿いのホテルまでが、ズラっと横並びに一気に見えるスポットがあるんだって。そこでプロポーズした新郎様がそう言ってたの。どこかなー?」

 真菜は、キョロキョロしながら、橋を行ったり来たりして景色を確かめている。

 真も少し先まで歩いてみた。

 「あ、ここだ!真菜、こっち!」

 えっ、と真菜が駆け寄って来る。

 「ほら、ここ!」

 真は真菜の両肩を掴んで、自分の前に立たせた。

 「うわー、本当だ。なんて素敵…」
 「ああ。水面にも反射して、綺麗だな」
 「凄い…圧倒されちゃう」
 「こんなスポットあるんだな」
 「うん。良かった、真さんが見つけてくれて」

 真菜が顔だけ振り返り、ふふっと微笑んで真を見上げる。

 真も微笑み返すと、やがて真剣な表情で後ろから真菜を抱き締めた。

 「真菜、結婚しよう」

 耳元で聞こえる声に、真菜は言葉を失う。

 「幸せにする、必ず。真菜、俺と結婚してくれ」

 背中に温もりを感じ、大きな腕に守られている安心感を感じながら、真菜は、はいと頷いた。
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