アンコール マリアージュ
 やがて観覧車はゆっくりと下り始める。

 真はどうにも気になって聞いてみた。

 「なあ、真菜。頂上で何がやりたかったんだ?プロポーズのあとにやる事、何が残ってる?」

 真菜は少し考えてから、うつむいたまま口を開く。

 「ごめんなさい。これは、新郎新婦のお二人から聞いたエピソードではなくて…。私の夢だったんです。だから、普通ではないかも」
 「真菜の、夢?」
 「ええ。この観覧車に乗って夜景を眺めながら、1番高い所に来た時に…って」
 「1番高い所に来た時に…。あ!もしかして、婚約指輪をパカッてやつか?そうだ、そうだよ。プロポーズのあとには、婚約指輪をはめるもんな」

 間違いないと確信した真は、何度も頷いてから真菜を見る。

 「そうなんだろ?でも、ごめん。指輪は用意してなくて…」
 「ううん、指輪じゃないです。そんな、準備なんて必要ないもので…」
 「準備がいらないもの…?」

 真菜は、考え込む真を手で遮る。

 「いいです!もういいんです。どうせもう、叶わないし」
 「なんでだ?今からだって、やればいいだろ?何ならもう一度乗って…」

 そこまで言って、真はふと閃いた。
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