アンコール マリアージュ
 高砂席の新郎の様子をうかがうと、職場の上司らしい人達に囲まれていた。

 「おーい、園田ー。めでたいんだから、もっと飲めよー」

 手にピール瓶を持ち、完全に酔っているおじ様方が、新郎のグラスにビールを注ぐ。

 (うわ、大変!)

 真菜は急いで新郎の後ろに回ると、隙を見て新郎のグラスを取り、空のグラスと交換する。

 そうでもしなければ、新郎は勧められるままビールを飲み、酔っ払ってしまうだろう。

 真菜はそっと新郎の顔色をうかがう。

 (お酒、あまり強くないって仰ってたもんなー。そろそろ限界かも)

 新郎のそばを離れた真菜は、司会者の所へ行き、新郎の退場を早めると伝えた。

 「新郎様、そろそろ一旦退場しますね」

 そう囁いてから、司会者に目配せする。

 「それでは、これより新郎も、お色直しの新婦様をお迎えに行かれます。拍手でお見送り下さい」

 新郎は立ち上がるとお辞儀をし、真菜の誘導で会場をあとにした。
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