アンコール マリアージュ
 「はー、参った。あんなに飲まされるとは…」

 控え室に入るなり、新郎はぐったりと椅子に座る。

 冷たいお水です、と真菜がグラスを差し出すと、一気に飲み干す。

 「1度ジャケットを脱いで、ネクタイも外しましょう」

 真菜が手伝うと、ようやく人心地ついた様に新郎は息を吐いた。

 「すみません、真菜さん。用意してもらってたお酒を流す容器、悪ノリした上司が見つけてあっさり奪われちゃって…」
 「そうなんですか。結婚式を挙げられた方はご存知なんですよね。ああいう物が高砂席のテーブルの下にあるって事。これからは、私が付きっきりで、グラスをせっせと空の物に交換しますね」
 「ご迷惑おかけしちゃって、すみません。俺が酒に弱いばっかりに…」
 「いえいえ、とんでもない。その為に私がいるんですから。何でもおっしゃって下さいね」

 真菜が笑顔を向けると、新郎も安心した様に頷く。

 「はーい、新婦様のヘアメイクチェンジ、完了しました!」

 希の声に振り返ると、髪をダウンスタイルにして生花をたくさん飾った新婦が微笑んでいた。

 「うわー、今度は可愛らしい感じ!」

 真菜は一気にテンションが上がる。

 「さあ、カラードレスも着てみて下さい!」

 新婦は笑顔で立ち上がると、カーテンの中でオレンジ色のふわりとしたドレスに着替えた。

 「素敵ー!お花の妖精みたい。ね?新郎様」

 真菜の言葉に、新郎も笑顔になる。

 「うん、亜希、凄く可愛くなったよ。さっきは凄く綺麗で、今は凄く可愛い」
 「やだ、夏樹くんたら」

 真菜はインカムを流し、拓真を呼んだ。

 有紗が新郎のブートニアを付け替え、新婦に華やかな色合いのオーバルブーケを手渡す。

 ドレスとブーケを見比べながら、希がアクセサリーを付け替え、拓真がお二人の何気ないひとコマを写真に収めていく。

 「さあ!ではもう一度披露宴会場へ」

 真菜の言葉に、皆で頷いて部屋を出た。
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