アンコール マリアージュ
出会った直後に挙式ですか?!
 3月18日の土曜日。
 この日は六曜では仏滅だった。

 「こんにちは!いらっしゃいませ」

 ガラス扉の前に立ち、真菜はやって来た若いカップルに笑顔で挨拶する。

 「あ、予約した山川です」

 男性が名乗り、真菜は手元のバインダーの予約名簿を確認する。

 「山川様と相原様ですね、お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

 開け放った扉からサロンの中に入り、お二人を中央の丸テーブルに案内する。

 「担当の者が参りますので、少々お待ちくださいませ」

 テーブルにお茶を置いて一礼してから、真菜はバックオフィスに戻る。

 「(あずさ)先輩、山川様・相原様いらっしゃいました」
 「はーい、ありがとう」

 長い髪を夜会巻きに結い上げた大人っぽい雰囲気の梓は、真菜に笑いかけてから、分厚い書類を手にバックオフィスを出て行った。

 「あ、真菜。あなたの担当の清水様、20分程遅れるって電話があったわ」

 店長の久保(くぼ)に言われ、真菜は、分かりましたと返事をする。

 (20分遅れって事は…。施設のご案内は後回しにした方がいいかな)

 考えながら、壁のホワイトボードに目をやる。

 そこには今日のスケジュールが書かれていた。
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