アンコール マリアージュ
 次の日。
 真は車でフェリシア 横浜に向かっていた。

 今朝、真菜の記事が載った雑誌が発売されるや否や、問い合わせの電話が殺到し、どの店舗もてんやわんやになった。

 記事に関する問い合わせも多く、昨日のうちに該当記事はPDFファイルで全社員に送ってあったが、やはり実物が見たいと、各店長から本社に頼んできたらしい。

 「明日には各店舗に届くように送ろうと思っていたのだが、出来るだけ早く見たいと言われて、今、エリア統括マネージャーが配りに行っている。せめてフェリシア 横浜には、お前が直接手渡して礼を言いなさい」

 社長に言われ、仕方なく雑誌を持って横浜に向かう事になったのだ。

 「店長が、それぞれ近所のコンビニで買った方が早くないですか?」
 と言ってみたのだが、どうやらこの特別号には豪華な付録も付いているらしく、どこも完売状態なのだとか。

 (はあ、真菜に会ったらなんて言おう。こっそり会わないように帰るか?いや、いかん。取材の件のお礼は言わないとな)

 真は腕時計を見る。
 時刻は16時40分だった。

 (すっかり遅くなったな)

 仕事をある程度済ませてから本社を発ち、途中渋滞もあった為、到着は17時を過ぎそうだった。

 (早く見たいと言われていたのに、申し訳ない)

 そう思いながら、真は車外の景色を眺めていた。
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