アンコール マリアージュ
 後ろ手に玄関のドアを閉め、まだ薄暗い夜明け前の空を見上げて、真は先程の真菜の顔を思い出す。

 熱のせいだろうか、少し弱々しく、潤んだ目で見つめてきた可愛らしい少女の様な笑顔。

 思わず真は顔を赤くする。

 (なんか、調子狂うな。あいつ、あんな顔するなんて)

 階段を下り、エントランスを出て歩き出す。

 (それに、そうだ。壁に貼ってあったあの写真…。どういうつもりで貼ったんだ?もしかして、仕事の参考にする為とか?アングルとか、勉強になるって言ってたしな)

 そうだ、きっとそうに違いない。

 自分にそう言い聞かせるが、ふと、先程の真菜の様子が脳裏に蘇った。

 そっと写真に手を触れながら、今日もかっこいいね、真さん、と呟いていたっけ。

 (どういう意味だ?俺がかっこいい?つまり、何だ?)

 答えが分かっている様な、いない様な…
 真は自分でも呆れるほど、頭の中で堂々巡りをしていた。
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