アンコール マリアージュ
 続いて久保が、真菜のおもしろ失敗談と題して、数々のやらかし事件を披露し、次に拓真が、真菜の号泣変顔、と言って、スクリーンに大きく真菜の泣き腫らした顔を写し出すと、会場は笑いに包まれる。

 やがて社長の昇がマイクを持ち、私しか知らない二人の様子、と言って、初めはノリよくふざけ合っていた二人が、いつしか恥じらう中学生の様に目も合わせられなくなり、その時二人の恋を確信した、と話すと、会場内はどよめいた。

 「そこからどうやって、二人は付き合ったんですか?告白は、どちらから?」

 久保にマイクを向けられ、真と真菜はタジタジになる。

 すると、真の父親が、真は筋金入りの照れ屋だ。おそらく一生に一度の勇気を振り絞って真菜さんに告白したのだろうと言い、皆は、おおーと、真に拍手を送った。

 「なんなんだよ、もう、この流れ…」

 うつむいて愚痴を言う真に追い打ちをかけるように、二人の生い立ちが、スクリーンに流れ始める。

 「えー、新郎新婦のご両親からお写真をお借りして、拓真が腕によりをかけて編集致しました。どうぞ、ご覧下さい!」

 音楽と共に流れるスライドを、真菜も食い入る様に見つめる。

 「やだ!真さん、可愛い!3才?ひゃー、お目々がくりくり。わー、6才!お坊っちゃまねえー。おっ!高校生?!かっこいいー!モテそう」

 真菜は、初めて見る真の子どもの頃の写真に、興奮が止まらない。

 が、画面が変わって真菜の番になると、立場は逆転した。

 「おー、真菜!可愛いじゃないか。ええー?木登りとかしてたのか、お転婆だな意外に。な、なんだ!この横の男は!付き合ってたのか?!」
 「ま、真さん、近所の男の子だから。それに5才の頃だってば」

 皆で楽しくスライドを見終わったあとは、お決まりのケーキカットやファーストバイトもさせられる。

 わざと大きくケーキを食べさせたのに、難なくぺろりと頬張る真菜に、皆は、さすが!と拍手を送った。

 披露宴は終始笑顔に包まれ、二人は皆に感謝の言葉を述べてお開きとなった。
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