アンコール マリアージュ
エピローグ
 「ふう、疲れたー」

 マンションに帰ってくると、真菜はソファにボフッともたれる。

 挙式と披露宴のあと、区役所に行って婚姻届を出し、帰ってきたのは夜の9時だった。

 「ようやく1日終わったな」
 「うん、無事に婚姻届も受理してもらったし。それにしても役所の人、第一声は『おめでとうございます』って言ってくれると思ってたのに。『奥さん、ここは旧姓書かなきゃだめだよ』なんて、普通言われる?」

 ははっと真は笑う。

 「そりゃ、勘違いされても仕方ない。まさか全く同じ漢字だと思わなかったんだろう」
 「それにしてもさ、説明したら、『へー、じゃあ結婚しても変わり映えしないね』なんてさ」
 「まあまあ。実際色々、名前の変更とかしなくて済んで、助かるじゃないか」

 それはそうだけど…と、真菜は口を尖らせる。

 すると、真がふと顔を上げて真菜に聞く。

 「そう言えばさ、あのノートだけど。ほら、真菜のDream Wedding♡」
 「え、な、何?急に…」
 「あれって、どこで終わってるんだ?結婚式の事だけ?」
 「うん、そうだけど。それが何?」
 「結婚式が終わった日の夜の事は?」

 …は?と真菜は首を傾げる。

 「書いてないけど。何?晩ご飯をどうするか、とか?」
 「違うねー。そんなんじゃない。もっと大事なことがあるだろ?」
 「えー?あ、明日の予定?仕事を休ませてもらうとか?」
 「ブッブー。ハズレ」
 「何よ、もう、何の事なの?」

 真菜が咎める様に問い詰めると、真は、知りたい?と、ニヤリと笑う。

 「え、う、うん。そりゃあ…」
 「よし。じゃあ教えてやろう」

 そう言うと真は、いきなり真菜を抱き上げた。

 「ひゃー!な、何?」
 「真菜、結婚式を終えた日の夜を、初夜って言うんだぞ?ほら、真菜の好きなファーストってやつだ。ファーストナイトの理想は?」

 真菜は、顔を真っ赤にする。

 「そ、そ、そんな理想、考えてなんかなかったもん!」
 「なら、俺の理想を教えてやるよ」

 ニヤッと笑って、真は真菜を抱いたまま寝室へ向かう。

 「ギャー!下ろしてー!」
 「だめだ。散々真菜の理想に付き合って、スポット巡りしたんだからな。次は俺の理想に付き合ってもらう」
 「な、な、何よー!イヤー!」

 …だがそのあと真菜は、真にとろける程愛され、最高に幸せな夜にしてもらったのだった。

 Fin ♡
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