アンコール マリアージュ
 「分かってるって。左手の薬指には、本当に愛する人にもらった指輪しか、はめたくないんでしょ?」
 「え、は、はい、まあ」
 「さすが真菜。今どき古風よねー。ね?美佳ちゃん」

 急に梓に同意を求められて、美佳はあたふたと答える。

 「いえ、その、齊藤さんは純情なんだと思います!」

 真菜は、美佳の言葉にうるっとくる。

 「ありがとうー、美佳ちゃん」

 思わず抱きつくと、久保がやれやれと手を広げた。

 「後輩にフォローしてもらうなんて、真菜ったらもう…」

 他の皆も笑っている。

 「何はともあれ、味方が出来て良かったわね、真菜」
 「はい!」
 「素直に喜んでどうすのよ。あなた美佳ちゃんのトレーナーでしょ?大丈夫なの?」

 呆れる久保に、またもや美佳が援護射撃する。

 「いえ、齊藤さんの接客、とても勉強になりました。新郎様が興味を持たれた人前式について説明されると、どんどん新郎様の表情が明るくなって。私、すごいなーって感心してたんです」
 「えー、そうなの?嬉しい!」

 パッと真菜の表情が明るくなる。

 「まったく…トレーナーが褒められて喜ぶなんてね。普通、逆でしょう?あ、それに美佳ちゃん。真菜のことは齊藤さんって呼ばない方がいいわよ。本部からいつ、役員の齊藤さんがいらっしゃるか分からないからね」
 「あ、はい!分かりました。真菜先輩と呼ばせていただきます」
 「いやーん、先輩だなんてー」

 両手で頬を押さえる真菜に、皆はまたもや呆れて苦笑いした。
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