アンコール マリアージュ
 「こちらです。どうぞ」

 サロンを出て短い通路を歩き、正面のドアを開けると、まるでホテルのような雰囲気の空間が広がっていた。

 「うわー、素敵ですね」

 新郎が、キョロキョロと辺りを見ながら言う。

 「こちらのソファにお掛けください。今、何着かドレスをお持ちしますね」

 そう言ってから、真菜は両手に白い手袋をはめ、ズラリと並んだドレスの中からいくつか選んで壁に掛けた。

 「まずこちらは、プリンセスラインの純白のドレスです。シルクタフタをたっぷり使ったスカートに、後ろは大きなリボンが付いたトレーンになっていて、とても可愛らしいですよ」

 高く掲げながら後ろも見せると、新郎は、おおー!と感嘆の声を上げるが、新婦は無言のままだ。

 (うーむ…。よし、次行ってみよう!)

 真菜は、隣のドレスを手に取る。

 「こちらはAラインのオフホワイトのドレスです。日本人の肌に馴染みやすい色合いですよ。スクエアネックで、鎖骨も綺麗に見せられます。お二人はガーデンでの人前式ですから、胸元のこの飾りも自然光にキラキラ映えると思いますよ」

 またもや、おおー!の声とシーン…という二人別々のリアクション。

 (めげないぞー!はいっ次!)

 「では、こちらのスレンダーラインはいかがでしょう?スタイリッシュで大人っぽい雰囲気ですね。歩きやすいので、ゲストの方ともお話しやすいですよ。綺麗な刺繍も、皆様に間近で見ていただけると思います。こんなふうに、マリアベールと合わせるのもオススメです」

 おおー!…シーン

 (ううっ…そろそろめげそう)
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