アンコール マリアージュ
 「では、ひとまずこの中から試着されますか?それとも別のドレスをお持ちしましょうか?」

 新婦に問いかけてみたが、やはり黙ったままだ。

 「亜希、試しにどれか着てみたら?」

 新郎がそう言うと、少ししてから小さく頷いた。

 真菜はホッとして、笑顔で聞いてみる。

 「新婦様、どれになさいますか?」

 シーン…

 (えーっと?どうしましょうか?)

 笑顔のまま、真菜は固まる。

 「ちなみに新郎様は、どれが新婦様にお似合いだと思われますか?」

 沈黙に耐えかねて思わず話を振ると、新郎は、そうだなーと考えてから、これかな?とAラインのドレスを指差す。

 「こちらですね。新婦様、もしよろしければ、このドレスを1度着てみていただけないでしょうか?」

 シーン…

 (なんだろう、私は透明人間にでもなったのかな?)

 もはや心が折れそうになった時、新郎が、着てみなよと救いの言葉をかけてくれ、新婦はようやく頷いた。
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