アンコール マリアージュ
 「まず、このパニエを床に置くの。Aラインのものか、ちゃんと確認してね。あと、裏表を間違えないでね。肌に触れる側が滑らかな方なの」

 カーテンを閉めた絨毯のスペースで、真菜は美佳に教えながら準備する。

 「そしたら次に、ドレスのファスナーを下ろして、スカートの内側に手を入れて広げる。それからパニエに被せるの。こんな感じで、しっかり下まで被せてね」

 よし、これで準備オッケー!と指差し確認すると、真菜は新婦を中に招き入れた。

 ドレスに両腕を通したらお声かけ下さい、と言って一旦カーテンの外に出る。

 しばらくしても声はかからなかったが、まあ想定内だと、真菜は自分から、いかがですか?大丈夫でしょうか?と声をかける。

 かろうじて、はい、と微かに返事が聞こえてきて、失礼いたしますとカーテンの隙間から美佳と二人でサッと中に入る。

 美佳に分かりやすいようにパニエを留めると、ドレスの背中を整えながらファスナーを上げる。

 「わあ!とってもお綺麗ですね」

 鏡に映るドレス姿の新婦に、真菜はお世辞ではなく、本当にそう思った。

 シンプルな私服姿とは違い、とても華やかな雰囲気で、肩のラインも美しい。
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