アンコール マリアージュ
 「サイズも良さそうですね。苦しくないですか?」

 真菜の見立て通り、9号でピッタリだった。

 「軽く髪をアップにさせていただいてもよろしいですか?」

 問いかけに返事はないが、どうぞとばかりに待っている雰囲気があり、真菜は失礼いたしますと言って、髪を上にねじりながらクリップで留めた。

 アクセサリーやベール、手袋なども、今日のところは取り敢えず真菜が選んで着けてもらう。

 「いかがですか?とても良くお似合いですね」

 鏡の中の新婦に笑顔を向ける。

 美佳も、本当にお綺麗ですねと声をかけるが、やはり新婦は黙ったままだ。

 「新郎様にも見ていただきましょうか?」

 辛抱強く反応を待つと、ようやく小さく頷いてくれた。

 「ではこちらを向いて、少々お待ち下さいね」

 カーテンの前に立った新婦のベールを整えてから、真菜はそっとカーテンを出る。

 「お待たせいたしました。新婦様、ドレスに着替えられましたよ」

 おっ…と立ち上がる新郎に、よろしいですか?と笑って少しもったいぶってから、真菜は一気にカーテンを開けた。

 一瞬息を呑んで目を見開いてから、新郎はため息のように呟く。

 「亜希、綺麗だな…」

 うふふと真菜も嬉しくなって笑う。

 「本当に、お美しいですよね。もう少しお近くへどうぞ」
 「あ、は、はい」

 新郎は新婦の前まで行き、マジマジと見つめる。

 「すごく綺麗だよ、亜希。なんだか別人みたいだ」

 うつむいていた新婦の顔が、その時ほんのり赤くなったのを真菜は見逃さなかった。
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