アンコール マリアージュ
「それで、これが今日試着されたドレスの番号。あと、私が見繕って着けてもらったアクセサリーや手袋、ベールの番号も書いておくの」
新郎新婦を見送ったあと、真菜はオフィスで美佳に書類の説明をしていた。
「今日のところは、ドレスは仮押さえの状態だし、ベールもまだ決まってない。でも次回のご試着の時に、この間のベールを試したい、と言われて、どれだか分からないと困るでしょ?写真だと、似てる物も多くていまいちよく判別出来ないし」
「なるほど、確かにそうですね。手袋なんて、この写真では全く分かりません」
「そう。だから写真の横にこうやって番号を書いておくの」
上村様のドレス姿の写真をプリントアウトし、余白に矢印で番号を書き込む。
「それと、これは決まりではないんだけど、私はお二人にお渡しする書類は、全てコピーを残して自分で持っておくようにしてるの。ほら、例えば今日は、ブーケセレモニーは当日雨だったらどうなるのか?って質問されたでしょ?」
先ほど新郎にそう聞かれ、雨の場合は屋根のあるテラスで行うこと、もしガーデンでの写真を撮れなかった場合は、別の日に撮影も可能だと話し、前撮りと後撮りのフォトプランの説明もしたのだった。
「この見取り図もそう。ガーデンのテラスの位置とか、ここに列席者の椅子を並べて、新郎新婦のお二人の立ち位置はガーデンをバックに…とか、書き込みをしてから渡したでしょ?これも自分用にコピーを持っておくの。どんな説明をしたか、話の食い違いが起きないように」
すると話が聞こえたのか、梓が声をかけてきた。
「へえー、真菜も随分成長したわね。なんかちょっと驚いた」
「え?私、そんなに仕事出来ませんでしたか?」
「いや、何て言うか、仕事以前に変な事するんだもん。入社してすぐの頃なんて、お客様に紅茶お出ししてって頼んだら、ティーカップに緑茶淹れるし」
ブハッ!と久保が飲みかけのコーヒーを吹き出しそうになる。
「あったあった!そんな事。あと電話の応対も酷かったよね。もしもし、こちらはフェリシア齋藤の横浜ですが、何か?みたいな」
オフィス中の皆がドッと笑う。
「そうそう、そうだった。しばらく、フェリシア齋藤ってあだ名だったよね」
事実ゆえに否定も出来ず、真菜が膨れていると、美佳までが堪え切れないとばかりに笑い出した。
「えー、ちょっと美佳ちゃんまでー」
「す、すみません。でも少しホッとしました。真菜先輩でも、最初はそんな感じだったんですね」
すると、梓が片手をヒラヒラさせながら美佳に言う。
「あの時の真菜に比べたら、美佳ちゃんなんてとっても優秀よー。あっという間に追い越しちゃうかもよ?」
「えー?!そしたら私、もう先輩なんて呼んでもらえなくなる…」
真菜がしょんぼりすると、久保も笑う。
「どうする?いつの間にか、おい、真菜!とか呼ばれてこき使われたら…」
「そ、そんな、まさか!絶対そんな事しませんから!」
美佳が慌てて否定する。
「そうですよ。美佳ちゃん、そんな子じゃありませんから!」
真菜が美佳の肩を抱くと、久保は嬉しそうに笑った。
「すっかりいいコンビね。これからも二人で頑張ってね!」
真菜は美佳と顔を見合わせて、はいっ!と返事をした。
新郎新婦を見送ったあと、真菜はオフィスで美佳に書類の説明をしていた。
「今日のところは、ドレスは仮押さえの状態だし、ベールもまだ決まってない。でも次回のご試着の時に、この間のベールを試したい、と言われて、どれだか分からないと困るでしょ?写真だと、似てる物も多くていまいちよく判別出来ないし」
「なるほど、確かにそうですね。手袋なんて、この写真では全く分かりません」
「そう。だから写真の横にこうやって番号を書いておくの」
上村様のドレス姿の写真をプリントアウトし、余白に矢印で番号を書き込む。
「それと、これは決まりではないんだけど、私はお二人にお渡しする書類は、全てコピーを残して自分で持っておくようにしてるの。ほら、例えば今日は、ブーケセレモニーは当日雨だったらどうなるのか?って質問されたでしょ?」
先ほど新郎にそう聞かれ、雨の場合は屋根のあるテラスで行うこと、もしガーデンでの写真を撮れなかった場合は、別の日に撮影も可能だと話し、前撮りと後撮りのフォトプランの説明もしたのだった。
「この見取り図もそう。ガーデンのテラスの位置とか、ここに列席者の椅子を並べて、新郎新婦のお二人の立ち位置はガーデンをバックに…とか、書き込みをしてから渡したでしょ?これも自分用にコピーを持っておくの。どんな説明をしたか、話の食い違いが起きないように」
すると話が聞こえたのか、梓が声をかけてきた。
「へえー、真菜も随分成長したわね。なんかちょっと驚いた」
「え?私、そんなに仕事出来ませんでしたか?」
「いや、何て言うか、仕事以前に変な事するんだもん。入社してすぐの頃なんて、お客様に紅茶お出ししてって頼んだら、ティーカップに緑茶淹れるし」
ブハッ!と久保が飲みかけのコーヒーを吹き出しそうになる。
「あったあった!そんな事。あと電話の応対も酷かったよね。もしもし、こちらはフェリシア齋藤の横浜ですが、何か?みたいな」
オフィス中の皆がドッと笑う。
「そうそう、そうだった。しばらく、フェリシア齋藤ってあだ名だったよね」
事実ゆえに否定も出来ず、真菜が膨れていると、美佳までが堪え切れないとばかりに笑い出した。
「えー、ちょっと美佳ちゃんまでー」
「す、すみません。でも少しホッとしました。真菜先輩でも、最初はそんな感じだったんですね」
すると、梓が片手をヒラヒラさせながら美佳に言う。
「あの時の真菜に比べたら、美佳ちゃんなんてとっても優秀よー。あっという間に追い越しちゃうかもよ?」
「えー?!そしたら私、もう先輩なんて呼んでもらえなくなる…」
真菜がしょんぼりすると、久保も笑う。
「どうする?いつの間にか、おい、真菜!とか呼ばれてこき使われたら…」
「そ、そんな、まさか!絶対そんな事しませんから!」
美佳が慌てて否定する。
「そうですよ。美佳ちゃん、そんな子じゃありませんから!」
真菜が美佳の肩を抱くと、久保は嬉しそうに笑った。
「すっかりいいコンビね。これからも二人で頑張ってね!」
真菜は美佳と顔を見合わせて、はいっ!と返事をした。