アンコール マリアージュ
 他には誰もいないサロンの1角で、真菜と美佳は、昨日打ち合わせした内容を確認していく。

 「えっと、招待状のデザインと文面はこれで決定。あとはお二人が、ご自分で宛名書きして発送するって事だったわよね」
 「はい。今日中に招待状の発注かけます。仕上がりは2週間後なので、次回の打ち合わせでお二人にお渡し出来ますね」
 「そうね。あとは、新郎様からご質問があった後撮りの件…」

 そう言って真菜は、昨日お二人にも渡したフォトプランの資料のコピーを取り出す。

 「挙式当日が雨だった場合、後日、後撮りをしたいって事だったわよね?」
 「ええ。でも、もし週間天気予報とかで、当日雨の可能性が高いと分かった場合は、前撮り出来ればと」
 「そうそう。つまり、前撮りにしても後撮りにしても、直前予約って事になる。なので、挙式と同じヘアメイクやドレス、カメラマンが手配出来るとはお約束出来ないって話したわよね?」
 「はい。資料にも書いてありますし、新郎様も、分かりましたとおっしゃってました」
 「いずれにしても、挙式当日が晴れなら、問題ないもんね。晴れるといいなー」

 そうですね、と頷いたあと、美佳は声をひそめて聞いてきた。

 「ところで新婦様の様子、相変わらず無口なままですが、真菜先輩どう思われますか?梓先輩の仰る通り、望まない結婚なのでしょうか…」

 うーん…と真菜は遠くを見ながら考える。

 「私の感じた限りでは、望まない結婚ではないと思う」
 「え、どうしてですか?私はやはり、どうしても新婦様がこの結婚に前向きだとは思えないのですが」
 「そうねえ、確かに楽しみな様子には見えない。でも、新婦様は新郎様のこと、本当に好きなんだと思う。ドレスの試着の時ね、新郎様が、綺麗だって仰ったら、新婦様のお顔、ほんの少し赤くなったのよ」
 「えー、知らなかったです。でも、じゃあどうしてあんなにいつも無口なんでしょう」

 美佳の疑問は、真菜も感じていた。

 「本当よねえ。単に、もの凄く人見知りな性格の方なのかも?ほら、お二人は子どもの頃からの幼なじみってお話だったでしょ?家も近所でって。合コンとかで知り合って結婚するタイプではないのね、きっと」
 「うーん、そうなんですかねえ」
 「まあ、これからも打ち合わせは続くし、少しずつでも私達に心開いて下さるといいね」

 そう言って真菜が笑いかけると、美佳も、そうですねと頷いた。
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