アンコール マリアージュ
 2日後。
 車で寮に来た二人は、まずポストを確認する。

 真は既に転居届を郵便局に出しており、302のポストの入り口にもガムテープが貼ってあった。

 真菜の手元を覗き込み、不審な郵便物がないか確かめると、真菜を部屋まで送っていく。

 そして再び1階に下りた真は、管理人室へと向かった。

 退去手続きを終え、鍵を返却して立ち去ろうとすると、ちょっと待ってくださいと管理人に呼び止められた。

 「ちょうどご連絡しようと思っていたんです。実は昨日、ポストの前で郵便屋さんが困惑していて…。どうかしましたか?って声をかけたら、封筒を見せてきたんです。部屋番号は302だけど、宛名は202の人だって」
 「何っ?!」

 真は一気に顔を強張らせる。

 「その封筒は?」
 「私が預かりました。こちらです」

 半ば奪うように封筒を受け取る。

 味気ない事務的な封筒にパソコンで印刷された文字、そして差出人も書かれていない。

 何もかもあの時と同じだが、部屋番号が302と書き加えられ、切手も貼られていた。

 「これは、私が預かります。心当たりがあるので」

 そう言うと管理人は、分かりましたと頷いた。

 真は管理人室を出て、建物の片隅に行くと、そっと封筒を開けてみた。
 
 恐る恐る中を覗き込むと、1枚の紙が折られて入っている。

 ゆっくりと取り出して、他に何も封筒に入っていない事を確かめると、紙を開いてみた。

 新聞か雑誌の文字を、1つ1つ切り抜いて貼った手紙…

 そこに並べられた文字を読んだ真は、スッと身体が冷たくなる気がした。

 『消えうせろ。さもなくば、また襲われる』

 (くっそー!)

 思わずグシャッと手紙を握り潰しそうになり、なんとか堪えると、鞄の奥深くにしまった。
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