アンコール マリアージュ
 「お待たせしました!」

 やがて真菜が大きなバッグを手に階段を下りてきて、真は我に返る。

 「ん、ああ、じゃあ帰ろうか」
 「はい」

 車に乗ってからも、真はじっと窓の外を見ながら考える。

 (やはり別々の事件なんかじゃない。この手紙と真菜が襲われた事は関係がある。だが、同一犯の仕業ではない。この手紙を送って来たのは、男ではなく、おそらくあの新婦だ)

 真は、隣に座る真菜にそれとなく話しかけた。

 「真菜。俺が最初にフェリシア 横浜にお前を迎えに行った日、確かお前はサロンで接客中だったよな?」
 「え?ああ、園田様と上村様の打ち合わせが長引いちゃった時ですね。それが何か?」
 「いや、何でもない」

 (園田様、上村様…。新婦の名前は上村か)

 難しい顔で再び考え始めた真を、真菜は少し不思議そうに眺めていた。
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