アンコール マリアージュ
 「じゃあ、俺はこのまま仕事に行くから」
 「はい。ありがとうございました」

 マンションのロータリーで真菜を降ろし、会社へと向かう。

 到着するとすぐに自分の部屋に入り、パソコンを開いた。

 顧客データを呼び出し、フェリシア 横浜のパスワードを入力する。

 挙式の日取り順のものと、担当者順の2種類の名簿があった。

 真は、担当者の真菜の名前を探してファイルを開く。

 (えっと、園田・上村…。あった、これだ)

 クリックすると、新郎新婦の名前や住所、連絡先などが載っている。

 (新婦の名前は、上村 亜希。年齢は27才。現在は無職。住所は、新郎とも近いんだな。横浜市戸塚区…)

 真は鞄の中から、先程の封筒を取り出した。

 (あーもう、触るのも忌々しいな)

 仕方なく手にして、消印を見る。

 (横浜中央郵便局か…。まあ、わざと家から遠い場所で投函したんだろう)

 うーん…と腕組みしながら考える。

 (これを新婦が投函したのなら、襲った男とはグルだな。なぜ真菜を狙うのか、目的は?新婦が企んで、男に手伝わせたのか、もしくはその逆か?)

 考えても答えは出ない。

 ただ一つ言える事は、手紙を送ったのが新婦なら、彼女は何かを知っている。

 (直接会って、聞き出すしかないか…。だが、やはり真菜には知られてはいけない)

 慎重に、だが早急に事を進めなくてはならない。

 真菜が今も狙われているのは、確実なものになったのだから。
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