アンコール マリアージュ
 「はい。実はお尋ねしたい事がございまして…。先日、会社の寮に手紙が届きました。それが、齊藤 真菜宛の手紙だったのですが、名字で誤解されたのか、私のポストに入れられたのです」
 「ああ、同じ漢字ですもんね」

 そう言う新郎に、真も頷く。

 「そうなんです。それで、私から齊藤 真菜に届けましたが、差出人が書かれておらず、誰からの手紙なのか心当たりがないと。さらには、封筒に切手や消印もなく、どうやらご本人がわざわざ寮まで来て、直接ポストに投函したらしいのです」

 そこまで言って、ちらりと新婦の様子をうかがうが、無表情なままだった。

 「そこで管理人に、ポストが映った防犯カメラの映像を見せてもらいました。すると、こんな画像が…」

 真がスマートフォンを取り出し、撮影した写真を見せると、新郎が覗き込んできた。

 「え、これって…。亜希じゃないか?」

 新郎がそう言うと、新婦はチラッと画像を見てから首を振る。

 「でも、ほら、このコート、亜希がよく着てるやつだよな?」
 「私も、フェリシア 横浜のサロンでお二人をお見かけした時にそう思いまして、それでこうして確認させていただこうと思った次第です」

 真も新婦を見るが、頑なに首を振るだけだった。

 「新婦様ではなかったのですね。大変失礼いたしました。では、防犯カメラの映像と封筒は、警察に提出します。ご迷惑をおかけいたしました」

 深々と頭を下げると、新郎が、え?と声を上げる。

 「警察に届けるんですか?」
 「はい。と言いますのも、封筒の中に貴重品が入っておりまして。きっと送った方は、返して欲しいだろうと思いますので」

 すると新郎が、再び新婦に尋ねた。
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