アンコール マリアージュ
 「拓真、あんたさ、いつまでもボケッとしてていいの?」
 「は?いきなり、何ですか?」

 拓真が面食らうと、有紗までが寄ってくる。

 「ほんとよー。拓真くん、真菜ちゃんが純情だからって、時間かけ過ぎよ?そろそろアタックしないと、他の人に取られちゃうわよ」
 「ちょ、ちょっと。なんでお二人とも、俺が真菜に、その、そういう前提なんですか?」

 希と有紗は、急に真顔になる。

 「あらやだ。この期に及んで、しらばっくれちゃって」
 「ほんと。まさか、気付かれてないとでも思ってたの?バレバレよ」

 拓真は、急に顔を赤らめ始めた。

 「いや、その、それは…」

 すると、希と有紗は枝豆を摘みながら話し出す。

 「まあねー、真菜は恋に恋する純情派だからさ。告白のシチュエーションとかも、きっと夢見るプランがあると思うし」
 「そう思うと、思わずためらっちゃう気持ちも分かるわ。ハードル高いものね。どれが正解なんだ?って」
 「そうそう。デートの帰りに手を繋いで告白…なんてのは、きっと順序が違うだろうし」
 「え、そうなんですか?」

 拓真は思わず身を乗り出す。

 「違うわよー、手を繋ぐ前に告白よ。真菜のプランならね」
 「じゃ、じゃあ、告白はどうやって?デートに誘う前に告白?」
 「それも違う。だって、いきなり何もないところで、付き合って下さい!だと、ロマンチックでも何でもないでしょ?」
 「ええー?!じゃあ、デートじゃないけどロマンチックなシチュエーションに持っていって告白?」
 「そう!正解」

 拓真はグッタリする。

 「そんな…どうすりゃいいんだ?そんなシチュエーション」
 「告白する前からそんなんでどうするの?まだまだ先は長いわよ」
 「そうよね。告白してオッケー貰えたとしたら、次は手を繋ぐタイミング」
 「そう。でも手を繋げたからって、じゃあ次はキスって訳にいかないからね」
 「そうそう。3歩進んで2歩下がる」

 ええー?!と、またもや拓真はグッタリする。

 「希先輩、有紗さん、今度シナリオ作ってくださいよー」
 「あらあら、そんな他力本願でどうするの?」
 「でも相談には乗るわよ。まずは告白のシチュエーションから考えてみたら?」
 「はあ、いっそのこと、酒に酔って抱き締めたい」

 それだけは絶対だめ!と、二人に睨まれ、拓真はションボリとうつむいた。
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