これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「あー、そ。それが俺への仕返しと当て付けってことか」
「ちがうよ、勝吾くん」
「いーよ、もう。めんどくせ」
「聞いて、勝吾くん」
じゃあ俺、こっちだから───と、家とは反対方向へ行こうとする。
映画館での会話、上映中に寝ちゃうとこ、ゲームセンターでズルをするところ。
そんな勝吾くんを好きになったんだって、私は今日、何度も思った。
「私はっ、ゲームソフトじゃない……!」
勝吾くんの背中は止まった。
6月もあと少しで終わる、駅前。
がんばろう、頑張ろうよ三好くん。
今までも私たちはきっといろんなことを頑張ってきた。
でもそれは“我慢している”ってだけで、本当のところは何も頑張ってはいなかったんだと思う。
実際は三好くんだって最初から分かっていたはずなんだ。
『そーやって今までも逃げてたんでしょ、
…あんたも』
あの日、お互いが見たくないものを見てしまった屋上で、三好くん言ってたよね。
だから私……もう逃げたくない。
「私は…勝吾くんから特別なプレゼントなんかもらえなくても、幸せだったよ…?
楽しかったし、一緒に笑いあったりするだけで嬉しくてっ、それが…本当の愛なんじゃないかなって、思うか───」
「あーもう!!だっからさ」