これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
学校に行く活力や根気という以前に、生きる気力のようなものがまったく無くて。
バイトも昨日は休んじゃって迷惑をかけてしまった。
ご飯だってろくに喉を通らず、ゼリー状の栄養材のみ。
こんなにも心だけじゃなく身体にも大ダメージだなんて思ってもみなかった。
「桜乃、ちょっと顔だけ見せて」
すっぽりと頭まで丸め込んだ布団を剥いでしまったお母さんは、いつもの忙しさを緩やかにさせていた。
そりゃもう母親なんだから察してくれているはずだ。
ああ、なんかあったな……と。
「あら~、砂漠にでも行ってきた?」
「……いってない」
それは身体中の水分を目から出しきってしまったから。
もうさすがに出ないだろうと思っても出てくるんだから、本当に困ってるの。
「桜乃が昔から好きだったミルク粥、作っちゃったよお母さん。だからお母さんのためにも食べて欲しいなあ」
「っ…、…たべ、たい」
「よし、食欲はある。なら大丈夫だ!」
「うん…っ」
明日は行く。
ぜったい頑張る。
ともちゃんだけじゃないメールも、温かいから。