これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




「あの、三好くん…」


『どーしたの』



そんなにも優しい声で返事をしてくれるのは、ダメだよ。

すぐ返事をしてくれるのもダメ。
弱っているときにされると、もっとダメ。



「私は…もう、見返しをする理由がないから……このゲーム、負けちゃったよ…?」



振られたようなものだ。
見返すよりも先に振られてしまった。

だから、私がこのゲームを続ける理由は無くなった。



『もう俺と浮気する意味がないって?』


「……うん」


『残念だけど、俺はまだあんだよね』



やめる気は、ないらしい。

そう思うだけでホッとした自分に違和感があった。



『だから俺に付き合って。これからは』



一言一言に心臓がきゅんと疼くなんて。

私をまだ必要としてくれる人がいる。


じわっと浮かんだ涙を拭うことなく、スマホ越しでも伝わるようにうなずいた。



「み、みよしくん」



ああ、だめ。

ほんっとうに自分が嫌になる。


優しくされると甘えたくなって、すがりたくなって、わがままな欲ばかりが溢れる。



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