これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




俺がもし、俺だけでもこのゲームに勝利して。

もとのセレナが戻ってきてくれたとして。


そのとき俺は、心から穏やかに笑うことができているだろうか。


この人を泣かせて、良かった嬉しいなんて感じることができんのかよ。───なあ。



「みよっ、んんっ、ふ…!」



いつからか、ただこんなふうに奪ってみたいだけなんじゃないのって思うようになった気持ちを、気づかないふりしていた。



─────この人が欲しいんだろ、俺。



俺に足りなかったのは積極性。

つまらないと言われて浮気された俺に足りなかったものは、積極性。


わかってんだよ。
セレナが俺に求めてるものなんか。


ああやってたくさんの男を弄んでは、それをあえて俺に見せることで、付き合ったときのように強引に無理やりに奪ってほしいって思ってることくらい。


ただそれを周りに見せしめたいんだろ。

そこで感じる優越感、ああ自分が大好きで仕方ないという気持ち。


羨め、羨め、この人形はあたしを選んで、あたしだけのものなの、って。



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