これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
だけど俺はもう、そんなあいつが欲しいとは思えないんだ。
今のセレナはもう、俺が好きだったセレナじゃない。
俺にとってはもう……セレナじゃない。
「んん…っ!、んうっ、…あっ」
ぎゅっと目をつむって、脱力する頼りない身体をなんとか支えて、浮かばせた涙を流さないように精いっぱい応えてくれようとしている姿。
うっすらと開いた瞳にすべてを記憶しながら、後頭部に回した手でもっと抱え込むように引き寄せる。
───…そうか俺は、ずっとこれが欲しかったんだ。
「は…っ、───…みよし…く、ん」
「…苦しかった?」
「く、くるし…かった…」
「ごめん」
こんなにも強引に、ここまで分かりやすくあらかさまで、自分本位に乱暴に奪ったことは初めてだった。
まさかこんなぜんぶ吹き飛ぶくらい、なにも考えらんなくなるキスを俺がするなんて。
ただ、したいと思った。
ただ、欲しいと思った。
それくらいしてまで自分のものにしたいと、思った。
「…みよし、くん……いま、の」
「その顔好きかも。“襲ってください”って言ってるみたいで」
「っ…」
今日までの俺は。
これが恋だなんて、知らなかったんだよ。