これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
大丈夫なの桜乃




「お母さん、私も手伝うね」


「あら。ありがと~」



家族団らんを過ごす日曜日の夕方。


キッチンに立つお母さんの横に立って、私はお味噌汁を担当することに。

料理は得意というわけではないけれど、昔からお母さんとこうして作っていた。


だから一般的な作法は問題なくクリアしていると……思う。



「うん桜乃?今日はどんなお味噌汁を作ってくれるの?」



いつもは完成してから具材を当ててくるお母さんが、なぜか今日はネタバレを欲求してきた。



「ええっと、豆腐とワカメと……あ。油揚げとネギも入れようかなって」


「わあ具だくさんで美味しそ~!でも…んんっと、ねえ。
お母さんの目には桜乃が用意したものと当てはまらないような気がするんだけどなあ。気のせいかな?歳かな?」


「え?お母さんはすごく若々しいよ…?」


「だよね?うんうん、ご近所さんにも良く言われるの!だからね、これ…」



苦笑いのお母さんの視線は、私がお味噌汁に入れようと用意してテーブルに置いた具材たちへと。

スーーっと、私もつられたように落としてみる。



< 148 / 267 >

この作品をシェア

pagetop