これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




あんなに可愛いんだから、そりゃそうだ。
天と地の差って、本当にあるんだよ。

三好くんだって彼女に惹かれて、そんな彼女のことを好きになったから付き合っているわけで。


だから見返したくて、自分のもとへ戻ってきて欲しいから私を利用したに過ぎない。



「センパイの手、ちっちゃ。折れそう」



震える私の手が、握られる。

こうして物理的な感触を感じることができるのに、本当に掴めるとは思わせてくれないのが三好くんだ。


この手を私は本当の意味で握り返すことはできないんだろう。


しちゃ、ダメなんだ。



「泣かないで、センパイ」


「うん…っ」


「って、もっと溢れてきたし」



どうしてそんなに優しい声が出せるの。

どうしてそんなに優しい目ができるの。


伸びてきた影。
親指の腹が、頬に伝わる涙を拾ってくれる。



「抱きしめて、い?」


「っ…、…うん」



また苦しくなるのを分かっていて私はうなずくんだから。


三好くんも三好くんだ。

優しすぎるのは罪だ。


どうしてキスしたの、どうして抱きしめるのって、理性を消すように感情がうごめく。



ルール3. 絶対に本気になってはいけない。



言い聞かせるだけで、心も泣いていた───。



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