これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
あの高田 セレナが、あの三好 奈都に振られた───と。
「妹とかの間違いじゃないの?」
「いやいや、たしか三好くんって一人っ子じゃなかった?」
「ええ~、じゃあ本当にセレナちゃんが振られたってこと?」
「でもショックじゃない?なつセレカップルが破局ってのもそうだけど、なにより三好くんが二股かけたってさ」
こう、なるんだ……。
噂というものはすごく怖い。
人から人へ伝わって、誇張されたものが広まって、そこに今度は個人の妄想や見解、考察が入る。
そしてそれが完成形だというように、また情報が変化しては進化して伝わってゆく。
「これが本当だとしたら、セレナちゃんかわいそ~!」
「ね。あんな美少女が三好 奈都に振られたってなると、なかなかキツくない?」
「それな?セレナちゃんのプライド的なものズタボロだよねえ」
そう言う女子生徒たちは、どこか嬉しそうだった。
「てかさあ、その三好くんが手つないでた女の正体は知られてないの?」
「それがよく分かんなかったんだって。マスクしてフード被ってたっぽいし」