これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「三好くんにも良くない噂が広まっちゃってるし、このままだとぜったいダメだから…」
「…センパイ」
「わ…っ!」
パシッと掴まれた手が、強く引っ張られる。
キスをして以来、こうして顔を合わせる機会はまた減ったり増えたりで、でもいろんな問題にそれどころではなくなった今。
なのに三好くんはベンチに座った膝に私をまた乗せて、無理やりにもふたりだけの空気にしようとしていた。
「三好くん、ちょっと待って…」
「…ここじゃ落ち着かないな」
「え…?───きゃっ!」
そのまま、身体が浮いた。
えっ、え……?なに、これ…、
三好くんに抱き上げられてる…?
「下ろして三好くん…!」
「危ない。怪我したらどーすんの」
「なにするのっ、どこいくの…!」
私の重さを表情に出すことは一切せず、彼は足を進めてとある場所で止まった。
屋上へつづく階段がある塔屋の隅。
そこはベンチから離れた、日陰。
「ひゃっ」