これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




同じだ。

私もそうなの、同じなんだよ三好くん。



「もう、負けよう俺たち。お互いにそれぞれが見返すことはできなかった」


「え…」


「だからそれまで手にしてたものは手放すことになるけど」



“捨てる”、ではなく、“手放す”。

どちらも本当に大切にしたいからこその言葉なんだろう。



「でも、仕方ないでしょそれは。…そんなのに執着してらんないくらい本当に大事なものが見つかっちゃったんだから」



それは、なんのことを言っているんだろう。

私を腕のなかに収めながら、背中に腕を回しながら、私のことを抱きしめながら、三好くんは続けた。



「俺は手に入れることだけが正しいわけじゃないって、知ったんだよ。
あえて手放すことで見えてくるものだってあるはずなんだ」



そっと身体が離されて、私の頬を優しく包み込むように撫でてくれる。



「どーいう意味か、わかる?」



あえて手放すことで見えてくるもの───。

高田さんと私、三好くんにとってそれはどちらに当てられるんだろう。


胸に何かが残ったまま、私は三好くんの袖をきゅっと掴んだ。



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