これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




屋上から覗けたのは、中庭にも繋がっている渡り廊下の陰。

そこに2人の生徒の姿がある。


男の子と女の子、片方は見覚えがあったからすぐに分かった。



「あそこが密会場所。火曜と木曜。もっと堂々としてくれていいってのにね」



密会…?
この子はなにを言ってるの…?

火曜日と木曜日、それは私がバイトの日だ。



「俺だったらもっとうまく隠して、なおかつギリギリを攻めつつ効率的にやるよ」



そんなことより、ねえ、勝吾くん。

どうしてそんなところで女の子の手を握って楽しそうに話しているの。



「う、そ……」



嘘じゃない。

そんなこと、私がいちばん分かっていたくせに。


都合のいい女、金づる、一番じゃない。

ぜんぶぜんぶ、誰かに言われる前に理解していたくせに。


勝吾くんはとうとう女の子を抱きしめて、頬を寄せるように顔を近づけた。



「……っ」



この距離からでもわかる。
とても可愛い女子生徒だ。

後ろ姿でもあんなに魅力的なのだから、惹かれてしまうのも仕方ないって。


いつかの駅でも見たね、似たような光景。



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