これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
謝るくらいなら、謝る気持ちがあるのなら。
どうして急にああなっちゃったのか、理由が知りたい。
そこには何があって、誰がいたの…?
「はやく戻って、センパイ。ここに居ないほうがいい」
「ど、どうし───」
「お待たせナツくーん」
ここの屋上は、いじわるだ。
いつもふたりだけでは居させてくれない。
公開処刑のときだって、ダブルデートのときだって。
私たちの前には必ず彼女がいる。
「あれ?一ノ瀬先輩?どうしてここにいるんですかあー?」
「っ…、ま、間違え…て」
「間違えて来ちゃったの?変なのー。あっ、だったら3人で食べましょうよ~」
今の私の味方は、お母さんが作ってくれたお弁当だけ。
私の仲間は、お友達は、お弁当だけ。
「ねえナツくん。いいでしょ?」
「………」
「ナツくん?」
「……どっちでも」
泣かないようにするだけ。
涙だけは落とさないようにするだけ。
泣いたら死んじゃうと思おう。
「ナツくん、はいっ、あーん」
「…やめろって。食べにくいし」
「いいでしょ?付き合ってるんだから!ね?」