これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「しょうご、くん」
私とはあんなキス、してくれなかった。
角度を変えて何度も何度も。
ただ、私だってあんなふうに首に腕を回して自ら求めるような積極性など持ち合わせていなくて。
だから頑張ってみようって、やってみれば。
逆に困惑させて、ドン引きさせて、挙げ句“つまらなくて意味不明”だと。
そんな結果が私には待っていた。
「どうして……っ」
私だって少しでも変わろうとしたのに。
でも勝吾くんは「グイグイ来られんの無理」って切り捨てた。
なのに遠い先で見知らぬ女の子と深いキスを交わす彼は、「最高」と言っているような気がした。
「だったら見返してやろうよ」
ぎゅうっとつむった目を、ぱっと開く。
私に1歩だけ近づいた後輩から広がるホワイトムスクに、視界が余計に歪んだ。
「あれ、俺の彼女。今あんたの彼氏とキスしてる女ね。はい最低」
「…え…」
ほんとうに最低だ。
私の彼氏も最低だけど、同じくらい君の彼女さんも最低だ。