これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「あの人を過去のあたしと同じ目に遭わせちゃってもいい?」
「…いいわけ、ないだろ」
「ならどうすればいいか分かるよね?ナツくん」
薄々、結局はこうなるんじゃないかって思っていた。
だから俺はそれ前に奪ってしまいたかったんだ。
「ねえ、もしかしてあたしと付き合って後悔してる?でもさ、思い出してよ…なつくん」
その一瞬だけ、ほんの、一瞬。
前髪で顔を隠しては自分に自信がなかった、小学生のセレナが見えた気がした。
「最初あたしに近づいてきたのは誰?どんなあたしも好きだって言ってくれたのは誰?無理やりにでも助けてくれたのは、だれ?
だったら……最後まで責任持ってよッッ!!」
いちばん無責任なのは俺なんじゃないかって。
好きに動いてはぜんぶを振り回しているのは、俺なんじゃないかって。
センパイを自分のものにしたい、センパイを守りたい、欲しい、傷つけたくない、でもやっぱり欲しい、だとしても泣かせたくない。
“正義のふり”をして無責任に動くか。
“悪のふり”をして確実に守るか。
俺が選んだ答えは───…後者だった。