これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「あの男は間違いなく2年2組の谷 勝吾(たに しょうご)。それで女は間違いなく1年4組の高田 セレナ(たかだ せれな)。
あんたの彼氏は、どっからどう見ても俺の彼女を抱きしめてキスしてんだよ」
「……や、だ…」
「そう。嫌だ。でもどんなに俺たちが嫌だ悲しいって言ったって、あいつらはほら……もっと激しくなった」
ぐ、と、私の顔を固定する力が込められて。
それは痛みよりも、やるせなさだったり、悲壮感が伝わってきた。
「はは、あんなところでヤっちゃう気なんじゃないの」
やめて、どうしてそんなにひどいことをするの。
どうしてそんなことができるの。
ちがう。
それはこの子に言うべきものじゃない。
私が見ないといけないのは、立ち向かわなければいけないのは、目の前のふたりだ。
「その目、節穴じゃないでしょ?見えるだろ?これが現実だよ。
都合よく利用されてたのは俺たちってこと。俺たちは……一番じゃない」
「…ちがう」
「違くない。そーやって今までも逃げてたんでしょ、…あんたも」