これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




なんだ今の間は。
それにガン無視って。

まあこれ以上掘り下げたとしても答えてくれないだろうし、そこまで興味もないからいーけど。



「だとしても……責任は持たなきゃだろ。俺さえ我慢すれば、その子を守ることだってできるわけだし」



俺にはいろんな責任があるんだ。
セレナに対してだけじゃない。

センパイに近づいたのだって俺なんだから、彼女を最後まで守る責任が。



「奈都、詳しいことはよく分かんねーが、お前のそれは優しさじゃない。とだけは伝えとく」



わかってるよ。

俺がセレナを切り捨てることができないのだって、そんなの優しさなんかじゃないこと。

センパイに嘘をついて離れたのだって、本当の優しさとは言えない。


だって今、きっと現に泣かせてんだから。



「つーかお前、まだこれにハマってんのな」



空気を変えるように健兄ちゃんが見つけたのは、俺の勉強机の端に何年も大切に保管してあるほうじゃなく。

ベッド脇に定位置として置かれている新しいほうだった。



「……うん。たぶん、この先もずっと好きなんだよ」



「わんぱんだ、だっけか」とつぶやいた、いとこの声が。

俺の本心を唯一理解してくれたような、そんなとても優しいものに感じた。



< 210 / 267 >

この作品をシェア

pagetop