これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
なんだ今の間は。
それにガン無視って。
まあこれ以上掘り下げたとしても答えてくれないだろうし、そこまで興味もないからいーけど。
「だとしても……責任は持たなきゃだろ。俺さえ我慢すれば、その子を守ることだってできるわけだし」
俺にはいろんな責任があるんだ。
セレナに対してだけじゃない。
センパイに近づいたのだって俺なんだから、彼女を最後まで守る責任が。
「奈都、詳しいことはよく分かんねーが、お前のそれは優しさじゃない。とだけは伝えとく」
わかってるよ。
俺がセレナを切り捨てることができないのだって、そんなの優しさなんかじゃないこと。
センパイに嘘をついて離れたのだって、本当の優しさとは言えない。
だって今、きっと現に泣かせてんだから。
「つーかお前、まだこれにハマってんのな」
空気を変えるように健兄ちゃんが見つけたのは、俺の勉強机の端に何年も大切に保管してあるほうじゃなく。
ベッド脇に定位置として置かれている新しいほうだった。
「……うん。たぶん、この先もずっと好きなんだよ」
「わんぱんだ、だっけか」とつぶやいた、いとこの声が。
俺の本心を唯一理解してくれたような、そんなとても優しいものに感じた。