これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




ともちゃんがなんのことを言っているのか、私にはよく分かっていない。

どうしてともちゃんがそこまで追い詰めた顔をしているのかも。



「バイト先でマネージャーとかにいっぱい怒られてるんでしょ…?後輩にも笑われてるんでしょ…?」


「…うん」


「どーしてそんなとこやめないの!!もう勝吾とも別れたようなものなら、そこまでしてお金稼ぐ理由もないじゃんっ」



どうして私のバイト先での詳しい内情をともちゃんが知っているのか、今も疑問だけれど。

心配そうに見つめてくる友達に、私は優しさを返した。



「だって……ここまで続けた自分の毎日を、無くしたくはないから」



続けた先にゴールがあるかは分からない。

その先で誰かに褒められるとか、そういう形としての褒美は無いかもしれない。


だとしても、これは分かりにくい渦巻きなんだ。


お父さんが言っていた。

表面から見ると同じことをぐるぐる繰り返しているだけだけど、側面から見たとき、それは間違いなく上にあがっているんだって。



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