これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「桜乃、わたし他校に彼氏がいるって言ってたでしょ?」
「うん」
「……え?わからない?この感じで分からない?」
「……え?」
本気で首を傾けた私を見て、ともちゃんだけじゃなく伊武くんまでもが小さく笑った。
伊武くんとはバイト先でもそこまで話したことはなく、彼はクールという皮にまたクールをコーティングさせたような人だと思っていた。
無口で、そのぶん仕事を淡々とそつなくこなしてしまうような。
けれどともちゃんと居る伊武くんは、そのイメージを覆してきた。
「俺、他校。それに友果からいろいろ頼まれて、友果の友達でもある一ノ瀬さんを見張ってた。…ってことは?」
「って、こと、は……」
もしかして、もしかして…。
「と、ともちゃんのお兄さんですか…!!」
「「なんでだ」」
ふたりからの総ツッコミ。
1ミリのズレなく、とてもいいハーモニーを奏でていた。
「同い歳よ同い歳!!たとえ双子だったとしても顔まったく似てないでしょ!?」
「あっ…、本当だ…」
「ってことは?」
「って……こと、は……」