これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「じゃあお母さん、ちょっと席外すね」
「いや、居てください。居て…欲しいです」
そう言ったのは勝吾くんだった。
そこまでして私とふたりきりになりたくないのか、それともまた違う理由があるのか。
答えは、そのあと彼が私に伝えた言葉のなかにあった。
「少し前に、これ…三好から渡されたんだ」
勝吾くんがリュックから取り出したものは、まだラッピングも外されていない箱形のプレゼントだった。
それはあの日、私が勝吾くんに渡すことができなかったゲームソフト。
私と勝吾くんが距離を置くきっかけとなり、それまで私たちをずっと繋いでいたゲームソフト。
「この値段分だけでもいいから、自分でバイトでもして金を稼いでみろって。
それができたら開ければいいって……そう、あいつから言われて」
そうだよね。
やっぱり三好くん、こーいうゲームはやっていないから。
それでも三好くんは何を目的として、そう言って勝吾くんに渡したのだろう。
「5日も続かなかった」
「え…?」
「近くのコンビニでいいかって思ってバイトしてみたんだけどさ。ほんと笑えるよな。
タバコの銘柄すら覚えらんなくて、客からキレられて……すぐやめた」