これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
力のない笑みは、自分自身に呆れ果てているようなものだった。
「桜乃はいつもボーッとしてることが多いから、たぶん俺より大変な思いしてたんだろうな…。
いっぱい怒られて、それでも俺のために続けてたのかなって、そう思ったら……開けられなかった」
勝吾くんは、人のために涙を流すことができるひと。
それだけで、もうそれだけで。
ぜんぶを許せる心が自分に備わっていることを強く強く実感したのは。
三好くん、君がいてくれたおかげだよ。
「ごめん…っ、本当に、ごめん…っ、クラスの奴らにゲームのためとか言ったっ、他の女とだって平気で関わった…、
そこでも俺は…、桜乃の悪口ばかりを言った……っ」
「…勝吾くん」
「俺なんか、相手のために何かするっていう概念すらなくて…、与えてもらえることが当たり前だと思って、それを逆に利用して……、
自分なんか怒られただけですぐ逃げ出すくせに…、まじで……最低だ…」
「───許さないよ」
そう言ったのは、真剣な眼差しで勝吾くんへと言ったのは。
いつも見守ってくれていた、穏やかなお母さんだった。