これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「あなたの行いは、桜乃の親としても人としても…許せるものじゃない」
「…はい、本当に…、すみませんでした、」
私が彼から言われたこと。
彼とのあいだに何があったのか。
お母さんに詳しくすべてを話すことはしていなかった。
けれど、私が泣いていたことは誰よりも知っている。
バイト先でいつも怒られて、それでも勝吾くんのためだけに続けていたことだけは、知っている。
「でも、…それはそのときの桜乃が勝吾くんのために与えた精いっぱいの優しさだっただろうから」
怒っている顔はしていなかった。
お母さんは今も勝吾くんの目をしっかりと見つめて、微笑む。
「この子は昔から、すっごく一生懸命ながんばり屋さんでね。
ただそれが相手にはなかなか伝わってくれないことがほとんどだけど……自慢の娘なの」
可愛くて立派なんだよ、私の娘は───と。
トドメのように言い切った母親の言葉。
恥ずかしくない、
恥ずかしい子なんかじゃない。
私にはそう、伝わってきた。
「ごめん、本当に…、ごめんなさい……っ」
私だけじゃなくお母さんに対しても何度も何度も謝る勝吾くんを前にして。
私はここで「私こそごめんね」も、「もういいよ」も、うまく言えないから。
それが私だから。