これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




泣きたいくらいに幸せで、同じくらいに苦しくて、ほんの小さなことでも胸は高ぶって。

笑顔を見るだけで嬉しくなって、声が聞けただけで満足して。


なぜか知らないけど、涙があふれる。


それだって、立派な恋なんだ。



「それにしても、ともちゃん遅いなあ…」



やっぱり手伝ったほうが良かったんじゃないかな…。

わざわざ屋上まで来させて相談というくらいなのだから、きっと思い詰めているに違いない。


いいアドバイスができるといいんだけど…。



「あっ、ひこうき雲……!」



真っ青な空へ指をさしたタイミング、屋上のドアが開いた音が聞こえた。

けれど私の視線は高く高くのぼってゆく一線にまっしぐら。



「ともちゃん、ひこうき雲があるよ!」



飛行機は見えないのに、その雲だけはスーーっと伸びている。



「あのね、くっきり見えるときは湿度が高いってことだから、実は次の日の天気はあまり良くないんだって」



ちょうどテレビでやっていた豆知識。

知らないことを知っていくって、こんなに楽しいんだね。



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